#7大工のてしごと ~鉋編粗削り~

匠ブログ

 

鉋の粗削り:木工の「スタートライン」と職人の手応え

木材加工において、最初の、そして重要な工程の一つが「鉋(かんな)の粗削り」です。この作業は、木材の表面を大まかに削り、反りやねじれ、厚みのばらつきを修正し、平面を出すことを目的としています。まさに、その後の「中削り」「仕上げ削り」といった繊細な作業へ進むための、土台作りと言えるでしょう。

先日、この粗削りを終えたばかりの大工さんが、こんな風に話してくれました。

これでようやく、スタートラインに立てた

その言葉の裏には、荒々しく見える作業の中にこそ、木材の素性を見極め、今後の加工の方向性を決める大切な意味があることを物語っています。

しかし、その達成感の代償として、大工さんの体には確かな手応えが残るようです。

「いやぁ、腕や肩がパンパンですよ!」と、彼は豪快に笑いながら、伸びをする仕草を見せました。

鉋を押し引きする力、木材の抵抗に打ち勝つために全身を使って踏ん張る力。特に粗削りでは、厚い削り屑を効率よく出すために、かなりの体力を消耗します。腕や肩、背中はもちろん、体幹や足腰にも疲労感が伴います。

この筋肉の疲労感こそが、大工にとって「良い仕事をした」という満足感の証でもあります。身体で木材と格闘し、その結果として理想の平面が現れる。粗削りは、単なる下準備ではなく、職人の技術、経験、そして身体能力が凝縮された、まさに木工の原点と言えるでしょう。

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